2018年8月16日

2018年8月16日
つい先日、『Tell Me Lies』という1968の映画の試写会をみてきた。監督が、ピーター・ブルックというので、これは観なくてはと思って。
というのも、ぼくが大学、大学院生の頃、ピーター・ブルックはイギリス演劇界の寵児で、シェイクスピアを演出させようが何を演出させようが、そのたびに評判になっていた。ぼくが観たのは、いまはもうなくなった銀座のセゾン劇場で2本くらい。そのあとも、いくつか観ている。面白かったかとたずねられるとちょっとつらい。英語がまったく聞き取れなくて、いくら字幕が出るといっても、やっぱり、幕の向こうで芝居をやってるみたいで、いまひとつのめりこめなかったというのが正直なところ。とくに、『Hollow Crown』の朗読劇なんかは、寝たような気がする。
それはともかく、彼が1968年にこんなベトナム反戦映画を撮ったというのがおもしろくて、試写会にいった、というわけ。
公開当時、カンヌ映画祭に選出されたものの、上映取り消し。ヴェネツィア映画祭に選出され、審査員特別賞次点とルイス・ブニュエル審査員賞の2部門を受賞。ところが、アメリカでもイギリスでも、一部の劇場でしか公開されなかった。それも様々な妨害を受けて短期間のみ、という。さらにフィルムもなくなっていた。それが2011年に発見されて、今回の上映につながったらしい。
おもしろいのは、1968年という時代がとてもはっきり出ていて、ところどこあまりにレトロな部分も目につくと同時に、現代と異様なほど状況が一致していること。それはおそろしいほどで、ここで提示されているのはまさに、いまの時代なのだという気がしてくる。
とくに強烈だったのは、ふたりの黒人の痛烈な世界批判。これをきくだけでも、この映画をみる価値はある。ついこないだの映画『わたしはあなたのニグロではない』にも通じるし、グラフィックノベル『MARCH』にも通じる。

さて、毎月恒例の赧郡果蕕気鵑らのお知らせです。

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残暑お見舞い申し上げます。
相変わらずお暑うございますが、いかがお過ごしでしょうか。

6月定例公演、7月じょぎ公演、いずれもたくさんのおはこびありがとうございました。
また6月7月は、ICU公開講座のほか慶應大の授業にも呼んでもらったり、恒例の京都造形芸大スクーリング、また青山きもの学院でのレクチャーなど、初めて義太夫を聴く方向けの仕事が多く、その都度いろいろ工夫しながらつとめてきました。
残念ながら8月はなにもなくて(レクチャー、イベントなどぜひご相談ください)、9月からの予定をお知らせします。

・女流義太夫9月公演 ◇9月20日(木)18時半 日本橋亭 「鎌倉三代記」三浦住家の段
https://tsuruzawakanya.com/schedule?month=9&year=2018#schedule965

・乙女文楽 東京公演 ◇9月23日(日)14時、18時半/  24日(月祝)14時 池袋芸術劇場 「奥州安達原」袖萩祭文の段
https://tsuruzawakanya.com/schedule?month=9&year=2018#schedule1043

・西川流舞踊会 ◇9月29日(土) 詳細は追ってHPにアップいたします

・衛彦 無常を語る ◇10月31日(水)14時半 国立能楽堂 「花競四季寿」関寺小町  ※チケット完売
https://tsuruzawakanya.com/schedule?month=10&year=2018#schedule1027

・じょぎ公演 ◇11月1日(木)/ 2日(金)18時半 広小路亭 「一谷嫩軍記」組討の段 ※前後を二日に分けて演奏
https://tsuruzawakanya.com/schedule?month=11&year=2018#schedule1007

・女流義太夫と上方舞 ◇11月7日(水)14時 COREDO室町3 橋楽亭 「花競四季寿」万歳、「艷容女舞衣」酒屋の段
https://tsuruzawakanya.com/schedule?month=11&year=2018#schedule1051

・21世紀の音の波間で ◇11月9日(金)18時45分 ムジカーサ 「三味線メドレー」
https://tsuruzawakanya.com/schedule?month=11&year=2018#schedule1055

・神楽坂まち舞台・大江戸めぐり2018 ◇11月11日(日) 詳細は追ってHPにアップいたします

この他、10月には岩手、福島と、プライベートなイベントに呼んでいただいています。

9月は少しは涼しくなっていると思います、というか思いたいです。
どうぞ皆様お誘いあわせてのご来場を、こころよりお待ち申し上げます。

鶴澤寛也
http://tsuruzawakanya.com/
Twitter、Facebookもやってます♪ (Instagramやめました)


2018年8月6日

2018年8月6日

YA作家、梨屋アリエさんからの情報です。
とても楽しそうな企画。時間のあるかたはぜひ!


9日(木)夜のトークについて


https://honto.jp/store/news/detail_041000026204.html


梨屋アリエさん×神戸遥真さん×こまつあやこさんトークセッション〜YA小説を書
いて作家になる〜
〜大人のための児童書の夕べ 第25回 10代も大歓迎!〜

日時:8月9日(木)19:00〜
場所:丸善・丸の内本店3F児童書売場特設会場
定員20名様 要整理券(電話予約可)


こまつさんは講談社児童文学新人賞受賞作を今月出版されたばかり。
神戸さんは電撃大賞で編集部の目にとまり、メディアワークス文庫で昨年デビュー。
児童文庫でも活躍中。最近のデビュー事情聴けるかも。

今回のメンバーは
梨屋アリエ主催の読書会「YA*cafe」の番外編「YA小説を書いてみよう部」
つながりの三人です。
http://yacafe.chagasi.com/bu/

 


2018年8月5日

2018年8月5日(日)
昨日……といっても、もう一昨日になったけど、新宿、紀伊國屋書店の2Fの詩歌のコーナーで、1冊、おお!という詩集を発見。
小笠原鳥類(ペンネームだと思う)の『鳥類学フィールド・ノート』(七月堂)。
ある種のナンセンス詩なんだろうけど、最初の「魚の歌」を読んで、びっくりした。

 

魚の歌

よいことがあると、いい。あの、ええ、
それが、とても、いい。
とても、穏やかに、うれしい、ことが、いい。
あの川に、いろんな、種類の歌が
魚が(魚の図鑑は歌の図鑑だ)楽譜が……
泳いでいて、魚の背中が見える。
魚は透明なので、内臓も見えるだろう健康な。
健康な健康だ、
魚のウロコがたくさんあって、それらの
輪郭の線が黒くなって、見える。
黒い絵、というものが、あった。魚を描いたんだろう
魚の図鑑が、画集で、あって
版画、だった。版画の群れ。
版画は十九世紀で、とても線が細かいものだ
銅版画。銅の、版画。よいことである
そこに、後で、水彩で、着色を、していた。
(このあとも、こんな調子で続いていく)

 

いやあ、すごいなあ。おもしろいなあ。やめられないなあ。というわけで、そのまま買って帰って、読んで、読み終えて、また最初から読み直してるんだけど、読み飽きない。読み飽きないどころか、不思議と不可解が螺旋を作ってぐるぐる回って、先が狭まってるのか、広がってるのかそれもわからないのに、快感……という、この不思議さ。
次の「ワニとゾウ」もすごい。

 

ワニとゾウ

ええ、あの、そのようであったと思う、そのようであったと思う、思う思う、安全で安心なワニが歩いていた。そのようであったと思う、ワニはゴムであった、ワニは緑色であった、ワニは水が近い場所にいた、ここも、そこも安全で安心な場所、とても良い良かった、ワニはとても安全で安心な生きものである。ワニはとてもゆっくりと歩くだろう。ワニは鳥に近い生きものだ、ワニはトカゲやヘビよりも鳥に近いんだ、そういうことを生物学の本で読んだ記憶がある、近縁だ、何の問題もない、とても安全で安心だ、何の問題もなくて、いつまでも健康で長生きして、長生き長生き、健康、生き生きたいそう、健康な体操、ワニは体操をしている。
(以下略)

 

ほかの詩集も買わなくちゃ!


2018年7月29日

2018年7月28日
このところ、映画はいまひとつヒットがないんだけど、本はすごい。
まず、なにより、こないだ共同通信の書評に取り上げた、チョン・ミョングァンの『鯨』(斎藤真理子訳、晶文社)。ストーリーを紹介してもしょうがない。とにかく、思い切り暴力的で猥雑で、滑稽で残酷で、深く切ない長編小説。おもしろすぎる。日本でいえば、古川日出男の『アラビアの夜の種族』か、岩井俊二の『番犬は庭を守る』か。世界の古典でいえば、ラブレーの『ガルガンチュアとパンタグリュエル物語』か、スウィフトの『ガリヴァー旅行記』か。ラテンアメリカだと、マルケスの『百年の孤独』か、ドノソの『夜のみだらな鳥』か。
現代韓国文学、恐るべし……というより、文句なしに面白い。


小手鞠るいの『ある晴れた夏の朝』(偕成社)が素晴らしい。2004年、8人のアメリカの高校生が、原爆肯定派と否定派に分かれて、公開討論会を開く。主人公は日系アメリカ人のメイ。原爆否定派のひとりだ。
4回に分けて戦わされる議論の厳しさと激しさ、それに使う資料の的確さと細かさと、8人の真剣さはいやおうなく読者をその熱い渦のなかに引きずりこんでしまう。
「安らかに眠ってください
過ちは
繰り返しませぬから」
という、平和公園の慰霊碑の文句は、日本人が自分たちの犯した過ちを反省し、「広島、そして、長崎で亡くなった人たち、いえ、戦争によって傷つき、亡くなった人たち全員の魂よ、安らかに眠れと願って」いる。これは日本人自身が原爆投下を認めているということではないのか。
「第二次世界大戦中、日本兵に殺された中国人の数は、原爆で死んだ日本人の百倍だったってことを忘れるな!」という言葉にどう反論すればいいのか。
「第二次世界大戦中、ドイツ、イタリア、日本は、三国同盟を結んでいたのですよ。日本の東条英機は、アジアのヒトラーだったのです。ユダヤ人を絶滅させようとしていたヒトラー率いるドイツと日本は、味方同士だったのです。(中略)アジアのヒトラーを原爆でこらしめて、どこがいけないのですか?(中略)日本のヒトラーは自分の国の国民まで、皆殺しにしようと考えていた。原爆によって、救われた日本人もいたんじゃないですか」というユダヤ系アメリカ人の高校生に返す言葉はあるのか。
この夏、必読のYA小説!
小手毬るいの『炎の来歴』(新潮社)も素晴らしい。1950年頃、主人公の青年は東京に出て苦学するうち、ふとした偶然から、アメリカの女性と文通をすることになる。その女性は、戦後の日本をアメリカに紹介したいと思っていて、その資料を求めていた。青年は辞書と首っ引きで必死に、日本の戦後を代表する作品を英語で紹介するうち、相手がユダヤ系アメリカ人で、現在、平和運動に身を投じていることを知る。青年は彼女に夢中になっていくのだが……。
朝鮮戦争からベトナム戦争の時代を背景に書かれた、グロテスクで、過激で、思い切り胸を打つ恋愛小説。


本の話はまだまだ終わらないのだ。
『心に風が吹いてくる 青春文学アンソロジー』(高山実佐、東直子、千葉聡編、三省堂)がいい。若者むけの詩歌や小説からの抜粋集。朝井リョウ、森絵都、佐藤多佳子、最果タヒ、綿矢りさ、穂村弘などの日本の作家の作品から、イリーナ・コルシュノフ、ジョン・グリーン(これはぼくの訳書『さよならを待つふたりのために』からの抜粋)などの海外の作家の作品まで。小説はどれも抜粋なんだけど、それを読むだけで楽しいし、あちこちに差しはさまれる詩歌や俳句も中高生にぴったり。
しかし、何より注目すべきは、東直子の4つの「青春文学エッセイ」! とくに2番目の「『好き』の瞬間」がいい。「好きで好きで、たまらなくなった」男の子のことが書かれているんだけど、軽く涙腺がゆるみます。同時に、中高の頃、こういう経験をしたかどうかって、大きいよなと思っちゃいます。


さらに、もう1冊。書肆侃々房から創刊された短歌ムック、「ねむらない樹」。編集長、田島安江、編集者、大森静佳、佐藤弓生、染野太朗、千葉聡、寺井達哉、東直子。いままでになかった短歌雑誌。若手の歌人が自由にいろんなことができそうな雰囲気がうれしい。
ぼくも短いエッセイを載せてもらってるんだけど、それよりなにより、冒頭の、伊舎堂仁、大森静佳、小島なお、寺井達哉が選んだ「新生代がいま届けたい現代短歌100」が出色!
そうか、たしかに、そうだよな!と思う。

 


2018年7月18日

2018年7月18日

数日前、またぽかをやってしまった。
芝居の開始時刻を1時間間違えて、最初の40分ほど見逃してしまった。これまで、40年くらい芝居をみてきたけど、この間違いは2度目。1度目は、子どもを連れて、岸田理生の『草迷宮』(蜷川幸雄演出)を観にいったとき。東急Bunkamuraの劇場に入ったら、まわりにだれもいない。30分前にきたはずなのに……と思っていたら、そばにいた係の人に、「もう始まっていますけど」と声をかけられた。このときも、おそらく40分くらい見逃したと思う。すごくいい芝居だったので、あとで、子どもにうらまれてしまった。あれはもう15年以上前のことだったような。
それで、ふと気づいたのだが、2度とも、開演時間が普通とずれていた。じつに言い訳がましいのだが、まあ、そういうものかと、ひとり納得している。


ところで、8月20日(月)、銀座の教文館で講演をします。テーマは「戦争」で、いままでに訳してきた戦争がらみの作品を取り上げながら、話ができればいいなと思っています。取り上げるのは、おそらく、次のような作品です。


『ブラッカムの爆撃機』
『水深五尋』
『臆病者と呼ばれても―良心的兵役拒否者たちの戦い』
『死について』
『追憶の夏 水面にて』
『武器よさらば』
『ジゴロとジゴレット』のなかの「征服されざる者」
『英国諜報員アシェンデン』
『ぼくらは壁を飛びこえて サーカスでつながる人種・民族・宗教』
『ナチスに挑戦した少年たち』(新刊)
『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる』(新刊)


新刊の2冊、『ナチスに挑戦した少年たち』は戦時中にデンマークでレジスタンス運動をした中学生を描いたノンフィクションで、サリンジャーの『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16 1924年』も前半の短編のいくつかは戦争がらみ。
こんなテーマで講演するのは初めてなので、大変かなとは思うものの、自分としても一度ちゃんと整理しておきたいと思ってます。
詳細は
https://www.kyobunkwan.co.jp/narnia/archives/info/db28cdbc-2
を。


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