2019年11月8日

 なんと、シャロン・クリーチの『あの犬が好き』が重版になった! すごい。なにがすごいといって、10年も前の本なのだ。大手の出版社だと、3年くらいたって在庫のはけない本はその段階で絶版になってしまうのに、偕成社は10年も待ってくれるところがすごい。児童書の出版社はそういうところがありがたい。

 あと、この本が重版になったのは、大阪梅田のジュンク堂の店員さんがコーナーを作ってくださったのも大きいと思う。

「ありがとうございます!」

 さて、来週、11日の月曜日は、法政大学の市ヶ谷キャンパスで大石大さんと、『シャガクに訊け』をめぐるトークです。 https://secure.univcoop.or.jp/wfm/publishing2019/

 それから、18日はB&Bで倉本さおりさんと『天才たちの日課 女性編』をめぐっての対談。倉本さんとは会ったことはあるのだが、対談はこれが初めて。かなり緊張してます。

http://bookandbeer.com/event/20191218/


2019年11月4日

 ふたたび、『龍彦親王航海記』より。澁澤龍彦が『唐草物語』(1981年)で第9回、泉鏡花賞を受賞したときのこと。

 

 スピーチが大嫌いな澁澤が、当日どんな受賞挨拶をするかは、多くのまわりの人間が半ばは心配し、半ばは興味津々だったようだ。注目のスピーチは次のように始まった。

「えー、ぼくは文学賞はノーベル文学賞でもお断りするつもりでした。しかし泉鏡花と言われ、つい承諾してしまいました。ノーベルにくらべ、泉鏡花は数倍もえらいんです。だいたいノーベルという男はなんですか、ダイナマイトを発明して大金持ちになっただけの男でしょう。もっともぼくはアナキストの面もあってダイナマイト発明者というノーベルは嫌いではありませんが……」

 聴衆が抱腹絶倒したこの澁澤のスピーチのことは、当時河出書房新社の澁澤編集者だった詩人の平出隆が……

(中略)

 授賞式のあとの酒宴で、「次回の鏡花賞はだれか」という話題が出た。奥野健男が「石川淳や埴谷雄高にあげたい」と言うと、澁澤は「マンディアルグやボルヘスなんかもいいと思うな」と言った。

 

 その澁澤龍彦が1970年代、泉鏡花の選集を企画したことがあったが、これは実現せず、幻の選集となっていた。ところが、それが「泉鏡花セレクション」として国書刊行会から出版されることになった。というか、すでに1巻目『龍蜂集』は出ている。全4巻の予定。

 解説がすべて、第46回、泉鏡花賞を受賞した山尾悠子。さらに、「各巻に解説者が特に選んだ一作品も増補追加する」とのこと。ちなみに第1巻の山尾追加作品は「山中哲学」。2巻以降は未定。装釘・装画は小村雪岱。各巻8,800円。


2019年11月2日

ハロウィーンだというのに、仮装もせずに丸の内丸善のイベントにきてくださったみなさま、ありがとうございます。 おかげさまで、いい会になったと思います。

「BOOKMARK」の最新号をみなさまにお届けすることもできたし。まだ、ほかでは配布していません。

 

今夜は12時過ぎから飲み始めて、前半、「奥飛騨」というお酒、後半、いつもの「飛鶴」の蔵出し原酒にさしかかったところです。これで飲み終えたので、また注文しなくちゃ。

 

ところで、礒崎純一氏の『龍彦親王航海記 澁澤龍彦伝』(白水社)が出版された。これが困る。じつに困る。とにかく仕事の邪魔なのだ。面白くてしょうがない。

礒崎氏は国書刊行会の編集者で、20世紀末、『山尾悠子作品集成』を国書から出版して、山尾悠子再評価のきっかけを作った。これを機に、山尾悠子が再起動して、次々に(という速さではないが、ぼちぼち)新作を書くようになる。礒崎氏なくして、昨年の泉鏡花賞受賞という事件はなかったはずだ。

その礒崎氏が、『書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録』という、とんでもない本を作ったのが2006年。タイトル通り、澁澤龍彦の蔵書目録だ。この本の企画をきいたとき、「だけど、そんな本、いったい、だれが買うの」ときいたぼくに、「金原さん、買うでしょう」といわれて、素直にうなずいてしまった。

そんな礒崎氏が命をかけて(おそらく)、書き上げたこの澁澤伝、見事な評伝になっている。最初は、飛ばし読みしていたのだが、途中から、最初にもどって、順に読みだしてしまった。この忙しいのに! なんでこんなおもしろい本を出すんだとぼやきながら。

たとえば、中村光夫や吉田健一などが始めた季刊「聲」という同人誌に三島も加わっていて、その三島が澁澤に手紙を出す。その手紙のなかに、こんなところがある。

 

「さてそれからがお願ひですが、貴兄は思ふ存分「サド論」を書いてごらんになるお気持ちはありませんか? もしそれが出来たらぜひ小生に、一番先に読ませていただけませんか?」

 

それをうけて、礒崎氏はこう続ける。

 

「もしそれが出来たらぜひ小生に、一番先に読ませていただけませんか?」などというのは、まさに三島の殺し文句だろう。

 

そして澁澤は60枚ほどのサド論を書いて、破格の金額の原稿料を受け取る。ところが、これは編集事務員による過払いだったことが後に判明する。

 

こんなエピソードも興味深いし、394ページに紹介されている、中井英夫の家での「薔薇の会」のエピソードも面白い。

澁澤は『ブリキの太鼓』の映画を試写をみて、「オスカルは私だ。私にそっくりだ」と思ってあやうく涙をこぼしそうになる。そのあと、当時中央公論社の編集者だった安原顕(31日の丸善でのイベントでぼくも紹介した、名物編集者)らといっしょに、南千住の尾花へ行き、鰻をばくばく食べたらしい。

さらにそのあと、5月23日に中井英夫の家で「薔薇の会」が催され、澁澤、龍子のほか、吉行淳之介、巖谷國士夫妻、武満徹夫妻らがいたという。これは中井英夫が丹精こめて作った薔薇の花をめでる会のはずだったのに、澁澤が軍歌を歌い出し、武満夫妻も加わって……という騒ぎになる。

とにかく、エピソードを追うだけで楽しいのだが、なにより、その時代の澁澤の業績を網羅的に、さらに、きちっと紹介し、その軌跡を追いながら、さらに現代的な意味にまで迫っているところが素晴らしい。

澁澤の死に際して、多田智満子が贈った詩を最後に添えるところがまた、礒崎氏らしい。

 

うつせみがうつせみを脱ぐように

あの人はこの岸に影を脱ぎすて

ほんとうにけむりよりかるくなってしまった

犬をして残された影をくわえて去らしめよ

風に微笑のしわのあるこの朝

 

これを読んで、ぼくの安アパートの一室にしつらえた書庫に(さがせば)あるはずの『長い川のある国―多田智満子詩集』を注文してしまった。

この本のあとがきがあっさりしているのも、いかにも礒崎氏らしくて、いいなあと、読み終えて思ったのだった。

読み終えてからも、ところどころまた読み返したくなって、はっきりいって、仕事の邪魔なのだ、この本は!

 

そういえば、この本の出版イベントがあるらしい。

 

『龍彥親王航海記』刊行記念・礒崎純一さん×東雅夫さんトークイベント https://www.hakusuisha.co.jp/news/n32030.html おそらく、すぐに満席になると思うので、ぜひ、早めに!


2019年10月31日

法政大学社会学部出身の大石大さんが、作家デビューをしました。

 

残念ながら、ぼくのゼミ出身ではないのですが、縁がなくはないのです。というのも、2005年末、『12歳からの読書案内』(すばる舎)という、中高大学生向けのブックガイドを監修しました。そのときは、いろんな作家、書評家、歌人、その他、たくさんの人に寄稿していただきました。

 

そのなかで、4人、法政大学の学生さんにもお願いしました。そのうちのひとりが大石大さんでした。そのときの名前は、大石和大さん。

 

その大石さんが、『シャガクに訊け!』(光文社)で作家デビューをしました。 この作品、第22回ボイルドエッグ新人賞受賞作品です。

 

じつは、このボイルドエッグ新人賞にも、ぼくはちょっと縁があって、この賞を受賞した万城目学さんの『鴨川ホルモー』の帯を書いて、さらに文庫本の解説まで書いています。

 

というわけで、このデビュー作の出版を記念して、大石さんとトークをすることになりました。それも、法政大学で!

 

詳細は、以下を。

イベントサイト

応募サイト

ぜひぜひ、遊びにきてください。


2019年10月28日

ときどき、イベントや講演に顔を出してくれる女の子からメールがきた。

お久しぶりです。 近況報告が更新されなすぎて、悲しいです。とのこと。

なので、書きます!

 

9月、10月は異様に忙しくて(というか、スケジュール管理がずさんすぎて)、生きた心地がしなかった。

 

とくに今月は、原稿を1本、まったく忘れていて、編集さんからメールで「どうなってますか?」と問われ、絶句! 夜を徹して書き上げて、送った。

 

すると、編集さんの返信がまた素晴らしい! 

こちらからは何も申し上げることのない、すばらしい原稿で、本当にありがとうございます。

 

もう、どう返信しようと思ってしまった。この編集さんから何かまた依頼されたら、絶対に断らないと思う。

 

「BOOKMARK」の単行本の紹介文。「ニューズウィークオンライン」に載ってます。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/culture/2019/10/bookmark.php

 

この『訳者による海外文学ブックガイド BOOKMARK 』、巷でなかなか評判らし い。先週の朝日新聞では、「丸の内丸善」での売り上げ4位になっていた。た だ、不思議なのは、「フィクション」の部門だったような……。

 

10月31日19時から、この単行本の出版記念イベントを丸の内丸善で行います。 ぜひ!

詳細はこちら

 

そういえば、こないだJ-Waveに呼ばれて、新刊についてインタビューされて 「BOOKMARK」の単行本のこととか、『天才たちの日課 女性編』のこととか話したところ、中学生の女の子からこんなメールがきた。

 

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今日のGood Neighbors 聴きました! ちょうど中間試験の真ん中の日で、学校は午前で終わりだったので、オンタイムで聴くことができました。 BOOKMARKは何冊か持っています。 今日のラジオを聴いて、私は本が好きな人が自分の好きな本や面白いと思っ本を、他の人にも読んだもらいたいと思う気持ちはみんな同じだと思い、本はそのものの面白さだけでなく、人と人を繋ぐ事もできるすごい物だと思いまし た。 10/31(木)と、11/24(日)のトークショーはどちらも行く予定です! アイアマンガーシリーズを含め、エドワード・ケアリーのあの雰囲気を訳せる古屋美登里さんに会えるのもすごく楽しみです。

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おお、これはすぐに古屋さんに知らせなくちゃと思ってメールしたところ、古屋さん、すごく喜んでくれて、なんか、自分もたまにいいことをしてるんだなあと思って、その晩、ひとり、日本酒を飲んでました(毎晩、飲んでるんだけど)。


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