2020年10月18日

 という本が原書房から出ました。いわゆる児童書の紹介本と違って、読み物として面白いのが特徴。そもそも、取りあげる本は編集部まかせで、自分はその解説に徹するという態度が素晴しい。コリン・ソルターは『世界を変えた100のスピーチ』や『歴史を変えた100の本』などの著者。英語圏で売れっ子のライター(とくに歴史に詳しい)です。どんな情報をもってくれば、この本を面白く紹介できるか、そこに力点があって、じつに楽しい読み物に仕上がっています。

 原書房の編集さんからこの本の翻訳をというメールがきたとき、まず考えたのは、ひとりでは無理。というわけで、3年ほどまえに始めた翻訳講座のメンバーに手伝ってもらうことにしました。この形の翻訳はすでに『メイキングブック 犬ヶ島』でやってます。ある書評で、「いい訳に仕上げてくれてありがとう」みたなことを書いていただいて、ほっとした本です。いや、難しかった。

 というわけで、今回も参加者を募ったところ7人が手を上げてくださって、こんな形にまとまりました。

 ところで、7人の訳文をチェックしているとき、驚いたのは、徹底的に調べてくれているということ。わからないことがあると図書館から本を借りて読む、あるいは買って読む、という姿勢がうれしい。

 そんなわけで、翻訳に協力してくださった方たちに、訳してみての感想を書いてもらいました。これがまた、面白い。これからひとつずつ、紹介していきます。

 まずは、笹山裕子さんから。

 

 『世界で読み継がれる子どもの本100』の特徴は、それぞれの作品の解説が、書影も含めてきっちり3ページにまとめられていることです。それも作品のあらすじや作者の紹介にとどまらず、時代背景や文学史における意味、作者の生涯や交友関係など、多岐にわたる情報が実質2ページ弱にぎゅっと詰めこまれています。そのため、短い記述の中にさまざまな事実や背景が反映されていて、ふと疑問や興味を抱いて調べているうちに、どんどん時間が経ってしまうこともありました。
 たとえば、わたしが担当した『若草物語』の解説に、作者ルイザ・メイ・オルコットの父の「general attitude to women」が、オルコット家の母と娘たちの女同士の絆を強めたという説明がありました。さらりと書かれていますが、いったいどのような態度だったのでしょうか。男尊女卑で封建的な父親だったのでしょうか。インターネットで調べてみると、エイモス・ブロンソン・オルコット氏は思想家・教育者で、人間の魂や対話を重視する新しい教育方法を取り入れようとしていたことが分かりました。女性の権利向上を主張していたと書いてあるウェブサイトまでありました。折しも新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、書店も図書館も閉まり、ネット書店からも本が届きにくい時期でしたので、あれこれ本を読み比べ、調べるわけにいきませんでしたが、たまたま近くの図書館でオルコットの評伝『ルイザ 若草物語を生きたひと』(ノーマ・ジョンストン著/谷口由美子訳/東洋書林)を借りることができました。そして父親のオルコット氏が情熱的な理想主義者で、自分が理想とする学校を創ろうとしては失敗し、そのため家族が非常に貧しい生活をしていたことが分かりました。権威主義的な父親というより、自分の理想に一途なあまり、家族を巻き添えにしていたという印象を持ちました。そこで「general attitude to women」には「家族への配慮も足りなかった」という訳をあてることにしました。ちなみにこの評伝、著者が物語作家なので読みやすく、しかも一家と思想家エマソンとの交流なども詳しく書かれていて、とてもおもしろかったです。
 後日、ありがたいことに、著者のコリン・ソルターさんに直接質問する機会があり、この記述についてたずねたところ、「general neglect of his wife and daughters」と表現したほうが正確でしたねとお返事をいただきました。ソルターさんは質問にすぐに、しかも丁寧に答えてくださって、誠実なお人柄を感じました。(笹山裕子)

 

 

 

 



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