2020年2月13日

 「小説すばる」で連載していた、「僕が次に訳したい本」という連載エッセイの80回目に取り上げたのが、〈IMA〉という写真の季刊雑誌の創刊準備号だった。たぶん、2012年だと思う。
 このエッセイの一部を引用してみよう。

 

 そして最後のほうには渡部雄吉の『A Criminal Investigation』という写真集の紹介。これは一九五八年に茨城県で起きたバラバラ殺人事件のふたりの捜査官を追ったもの。当時は雑誌に掲載されただけだったが、「あるイギリス人が神保町の古本屋で渡部のオリジナルプリントを偶然発見したことをきっかけに」、海外で展示されるようになり、フランスで写真集として出版されることになったという。捜査本部での会議の様子、捜査官の歩く町の様子、黒電話でしゃべっている横顔、霧のかかった橋の上のふたりのシルエットなど、どれもが映画のスチール写真じゃないかと思ってしまうほどの臨場感があって、奥行きがあって、迫力がある。この写真集は早速注文した。

 

 このエッセイを書いた段階では手元になかったのだが、しばらくしてフランスから届いた。判型はほぼA4で布装。表紙にはタイトルを印刷した紙と、刑事の小さめの写真が貼ってある。とても凝った装丁で、印刷されている紙がふつうの写真集の紙ではなく、かすかに黄色味を帯びた紙で、それも袋折り。2012年の発行だった(初版は2011年らしい)。
 じつは昨日、捜し物をしていてこの本が見つかり、何度もくり返しながめて、いいなあと思い、もう一冊買っておこうと思って調べてみたら、2013年に日本でもこの写真集が出版されていたので、こちらを買ってみた。出版社はroshin books。『張り込み日記 渡部雄吉』。霧のけぶる橋の上でふたりの刑事が向かい合っている写真が表紙だ。こちらはよくある写真集の紙を使っている。おもしろいことに、フランス版とこの日本版、くらべてみると、収録されている写真が違うのだ。日本版の後書きには、こう書かれている。

 

 幸いにもオリジナルのネガフィルムは日本で保管されていて、今作品は新たに制作されたプリントで再構成した。

 

 じゃあ、もっとほかの写真もみたいなと思って調べてみたら、なんと、2014年に、こんな本が出ていることがわかった。
 『張り込み日記』渡部 雄吉 (写真) 乙一(構成と文) 祖父江慎、その他(AD)
 出版社は2008年にできたナナロク社。同社の紹介文をちょっと引用。

 

60年前に、写真家・渡部雄吉が撮影したのは、
実際の殺人事件を捜査する刑事2人組の捜査記録でした。
20日間にわたり撮影された、のべ1000枚以上の写真を、
ミステリー作家として人気を集める乙一が構成に参加、
一冊の写真集となりました。
写真の合間には、乙一による事件概要を記載。
徐々に解明される事件の全貌を追いながら、
渡部雄吉の写真の真に迫る美しさが堪能できる一冊です。

 

 ナナロク社といい、roshin booksといい、おもしろい企画を立てて、いい本を出してくれているんだなと感動してしまった。
 それにしても、神保町でオリジナルプリントを発見したイギリス人がすごい!
 「千里の馬は常に有れども伯楽は常には有らず」
 ぼくもヤフオクで頑張ろうと思う。



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