2019年11月4日

 ふたたび、『龍彦親王航海記』より。澁澤龍彦が『唐草物語』(1981年)で第9回、泉鏡花賞を受賞したときのこと。

 

 スピーチが大嫌いな澁澤が、当日どんな受賞挨拶をするかは、多くのまわりの人間が半ばは心配し、半ばは興味津々だったようだ。注目のスピーチは次のように始まった。

「えー、ぼくは文学賞はノーベル文学賞でもお断りするつもりでした。しかし泉鏡花と言われ、つい承諾してしまいました。ノーベルにくらべ、泉鏡花は数倍もえらいんです。だいたいノーベルという男はなんですか、ダイナマイトを発明して大金持ちになっただけの男でしょう。もっともぼくはアナキストの面もあってダイナマイト発明者というノーベルは嫌いではありませんが……」

 聴衆が抱腹絶倒したこの澁澤のスピーチのことは、当時河出書房新社の澁澤編集者だった詩人の平出隆が……

(中略)

 授賞式のあとの酒宴で、「次回の鏡花賞はだれか」という話題が出た。奥野健男が「石川淳や埴谷雄高にあげたい」と言うと、澁澤は「マンディアルグやボルヘスなんかもいいと思うな」と言った。

 

 その澁澤龍彦が1970年代、泉鏡花の選集を企画したことがあったが、これは実現せず、幻の選集となっていた。ところが、それが「泉鏡花セレクション」として国書刊行会から出版されることになった。というか、すでに1巻目『龍蜂集』は出ている。全4巻の予定。

 解説がすべて、第46回、泉鏡花賞を受賞した山尾悠子。さらに、「各巻に解説者が特に選んだ一作品も増補追加する」とのこと。ちなみに第1巻の山尾追加作品は「山中哲学」。2巻以降は未定。装釘・装画は小村雪岱。各巻8,800円。



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