2019年7月24日

先日、新国立劇場へ『骨と十字架』(野木萌葱作、小川絵梨子演出)を観に。

 

作者も演出家もまったく知らず、どんな内容かも知らず、なぜチケットを買ったかもわからず、たぶん、いい席が残っていて、チケットが少し安かったせいかもしれないのだが、そのへんのこともまったく覚えていない。だから客席に座ったときも、とくにその日は疲れていて、つまんなかったら速攻寝ちゃいそうと思ってたのに、開演3分後には、思い切り目が覚めてしまって、最後まで一気に観てしまった……という言い方はちょっと変だけど、とにかく面白くて面白くて、こういう科白劇、久しぶりだったし、なにより、脚本そのものの出来に感心してしまった。

 

20世紀初め、古生物学を専攻し、進化論を信じ、その一方で神を信じているイエズス会の神父、彼を激しく糾弾するバチカンからの使者、彼をかばいながらなんとか救おうとするイエズス会の総長、彼と似た立場ゆえ北京に飛ばされた神父、彼の弟子、これら5人が幕開け早々、めまぐるしいテンポで神学論争を始める。そのやりとりがめっぽう面白い。

 

ある意味、へりくつにすぎない論争が、辛辣な皮肉、当てこすり、罵倒に隠れた優しさ、ナンセンスにみせかけた真意などを交えて、火花を散らす。なにより素晴らしいのは、それぞれの立場が違うものの、ひとりひとりがその立場を心から信じていて、それを守ろうと必死になっているにもかかわらず、相手の立場も十分理解しているということがひしひしと伝わってくることだ。

 

後半、主人公の神父がスウェーデンの調査隊の一員となって、北京原人の骨を発掘してからの展開も見事。

 

キリスト教などほとんど信じていない作者が(信じていたらごめんなさい)作った芝居を、キリスト教などほとんど信じていない演出家が(信じていたらごめんなさい)演出し、キリスト教などほとんど信じていない(信じていたらごめんなさい)役者が演じているというのに、観ていて、異様に共感してしまった。もちろん、ぼくはキリスト教などまったく信じていない。

すごいなあ。 こういう空間が生まれたことがとてもうれしかった。そうか、そうなんだ、こんな芝居があるんだという発見にひとりで感動してしまった。

 

野木萌葱という名前、しっかり覚えておかなくちゃ。次の公演はいつなんだろう。

この作品のヒントになったというアミール・アクゼルの『神父と頭蓋骨』、すぐに買いました。

 

 

さて、『アオイガーデン』や『ホール』で日本の読者を震えあがらせたピョン・ヘヨンさんが来日。白水社から近く出る『モンスーン』という短編集の出版記念。

 

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『モンスーン』刊行・著者来日記念

 ピョン・ヘヨン×金原瑞人特別対談

2019年8月4日 @ 3:00 PM – 5:00 PM

神保町のブックハウスカフェにて。

詳細はこちらを。

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