2019年3月19日

2019年3月19日

3月22日(金)19時から青山ブックセンターで、深緑野分さんとの対談があります。まだチケット余ってます。ぜひ、遊びにきてください。
http://www.aoyamabc.jp/event/ghost-series/


ニール・ゲイマンの『北欧神話』、好評のようで(たぶん、ゲームのせいもあり)、早くも増刷が決まったところです。
喜んでいたら、とてもうれしい感想がきたのでご紹介を。送ってくださった方からは、「匿名で」とのことなので。


『北欧神話』の主人公はロキで、ロキの孤独を書いた話だと思いました。
冒頭の神々の紹介に、「そんなロキを神々が受けいれているのは〜」とありますが、『北欧神話』において、アース神族の神々は、最初から最後まで、一度たりとも、ロキを受けいれていないと思います。
神々は、都合のいいときだけロキの知性や力を利用して、ひとたび都合が悪くなれば、すべての責任を彼ひとりに押しつけ、あっさりと切り捨てます。それは、巨人の子であるロキが、アース神族にとってよそ者であることと無関係ではない気がするのです。
ロキの「悪ふざけ」の根底には、そうした神々のへの怒りが流れていると思います。
それでもロキが、アース神族へストレートに怒りをぶつけないのは、より深い本音では、彼らに受けいれられたいと願っているからでしょう。だからこそ、あれだけ馬鹿にされ、ひどい目にあわされても、神々に対して、アドバイスやよい道具をもたらしたりするのだと思います。役に立つ存在として認められれば、いつかは共同体の一員になれるのではという期待があるのでしょうね。
でも人は(この場合は神々ですが)、差別している相手のことは、どれほど役に立ったとしても、ただ便利と思うだけで、決して共同体に入れようとはしないものです。むしろ差別をすることで、相手が仲間に入れてもらいたい一心で、ますます無償でよく働いてくれるのを、無意識に利用するものではないでしょうか。
アース神族の神々は、ロキへのこうした差別が、いつか復讐として自分たちに返ってくるのを予期していて、それがラグナロクの予知夢の形で表れているのだと思います。後にそれは現実化するわけですが。
ロキがアースガルズの外に家庭をつくったのは、彼が孤独だからではないでしょうか。アングルボザは、アース神族ではなく巨人です。そして、自分の手でつくった家族なら、自分が疎外されることはありません。子どもたちが連れ去られても、ロキの死を予知しても、ただ静かな目をしている「賢い女」アングルボザは、ロキの孤独をよく知っていたのでしょう。
そんなロキだったからこそ、バルドルの盲目の弟ホズの孤独を感知することができたのだろうとも思います。相手のほんのわずかな言動から、共同体からの疎外を察知する経験を、ロキもホズも子どものころからずっと重ねていたんでしょうね。
また、ロキの5人の子どもたちの中で、ただひとり破滅しなかったヘルのことも考えてしまいます。彼女が他の子どもたちとの最大の違いは、アース神族に仕事(=共同体における居場所)をもらったことと、女性であったことです。容姿のために、「あからさまに嫌な顔」をされて育った彼女は、世界や人間や神々の理不尽さをよくわかっていたのだと思います。
また、ヘルのいる死者の国は、戦死以外の死に方をした死者が来るところです。戦死は覚悟の上の死ですが、その他の死はいわば理不尽な死です。いろいろな理不尽を見てきたヘルは、父や兄弟の受けた理不尽な仕打ちを静かに見つめることができて、生きながらえることができたのかもしれません。



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