2018年1月10日

2018年1月8日
ポプラ社の「asta」という月刊誌の2018年1月号に掲載されている曾野綾子のエッセイで気になるところがあったので、ちょっと書いておきたい。以下の部分。

 

 全く性格にもよるけれど、女性は大局を見ず、些事にこだわる、と言われる。女性が小説家に向いているのは、小説というものはそもそも「大説」ではなく、つまり些事を書く仕事だからである。(43ページ)

 

 これを読んで、おいおい、といいたくなった人も多いだろう。女性のピアニストの演奏のほうが表現が細やかで繊細だという意見と同じで、眉唾だと思うし、賛同する人もあまりいないのではないか。しかし、まあ、そこは人それぞれの考えがあっていいので、真っ向から反論するつもりはない。ただ、「小説はそもそも『大説』ではなく、つまり些事を書く仕事だからである」というところが気になる。
 つまり小説の「小」を「細かい」と考えているのだが、辞書・事典・辞典のなかで「小説」を「些事を書いた散文」と説明しているものにはいまだお目にかかっていない。
 というわけで、小説とは何かについて少し書いておきたい(途中、説明がくどいので、結論をさっさと知りたい方は※まで飛ばしてください)
『日本国語大辞典』で「小説」を引くと、,房,里茲Δ弊睫世ある。

 

民間に伝わる話や市中の話題を記述した、散文体の文章。正式の、改まった文章ではないもの。中国の稗史(はいし)から出たもので、ふつうはある程度史実に基づいた話をさすが、あたかも史実のように見せかけた虚構の話をさすこともある。

 

 そこで小説のもとになった、「稗史」だが、『広辞苑』では「昔、中国で稗官(はいかん)が集めて記録した民間の物語。転じて、広く小説をいう。」とある。「稗」というのは穀物のヒエのことで、転じて、小さい、細かいの意味。稗官は小役人のこと。なので、「稗史=小説」と考えていい。ちなみに『新漢語林』には「稗官小説」という言葉が紹介されていて、「”4韻僚犬瓩刃辰竜録。⊂説。作者の想像によって世事・人情などを実話のように書いたもの。つくりものがたり。フィクション」とある。
 『ブリタニカ』の「小説(中国)」の説明がそのへんをさらに詳しくまとめている。「中国文学にあっては小説は戯曲とともに賎民的な存在」であったと最初に書かれていて、そのあと、明・清の代表的な作品として、『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』などがあげられている。どれも気宇壮大な物語だ。
 つまり、簡単にいってしまえば、「小説」とは元々、庶民の娯楽としてのフィクション、作り話を指していた。
 また、明治時代、ヨーロッパのロマンスやノヴェルの訳語にこの小説が使われるようになり、これが新たに近代から現代の小説一般をさす言葉になった。これについても『日本国語大辞典』に詳しい説明があるけど、省略。
※以上のことをコンパクトにまとめた説明が『新漢語林』の「小」の項のなかの「小説」の解説だ。これには次のように書かれている。

 

ー茲襪紡らない議論。(この意味で日本で使われることはないと思う)
∪痢中国で、俗世間の出来事などのおもしろい話、また、それを書いた書籍。六朝の志怪小説、唐代の伝奇小説などの文語体の短編小説と、宋(そう)以後の白話の長編小説の二大系統がある。
6畭緤験悗侶措阿琉譴帖作者が想像し、または事実を脚色した散文形式の文学。novelの訳語。

 

最後にもうひとつ『チャレンジ 小学国語辞典』の説明を。

 

しょうせつ【小説】名詞 作者がつくり出した人物を通して、人間の生き方や社会のありさまをえがく文学。


さて、毎月恒例、赧郡果蕕気鵑らのお知らせです。

 

****************

みなさま

昨年中はいろいろとお世話になりありがとうございました。
わさわさした年でしたが、伝統枠とはちょっと違うところでもお楽しみ頂けたようでありがたかったです。
また昨年最後は、大曲中の大曲「仮名手本忠臣蔵」九段目山科閑居の段(後)をつとめるチャンスをいただき、プレッシャーに押しつぶされそうになりつつ必死に勉強いたしました。
今年もいろいろな仕事をいただけるといいなあと思っております。

本年もまず古典の名曲で幕開けです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

*****

今後の予定
1月14日(日)13時 紀尾井小ホール 「第4回弓弦葉の会」
「近頃河原の達引」堀川猿廻しの段、新作「十三夜」(新内とかけあい 朗読)
http://tsuruzawakanya.com/schedule#schedule919

1月20日(土)13時 日本橋亭 「女流義太夫初春公演 新春恒例・娘義太夫の風情にて」

「壷坂観音霊験記」沢市内より山の段→私も日本髪風にしたいのですが、若手じゃないからダメって言われています涙
http://tsuruzawakanya.com/schedule#schedule828

2月11日(日)13時 新宿ほり川 「鶴澤寛也一門 第16回おさらい会」
アマチュアのお弟子さんのおさらい会。義経千本桜他
http://tsuruzawakanya.com/schedule?month=2&year=2018#schedule949

2月18日(日)16時半 国立劇場 「第61回日本舞踊協会公演」
夜の部「万歳」
http://tsuruzawakanya.com/schedule?month=2&year=2018#schedule960

3月4日(日)17時 国立小劇場 「2018都民芸術フェスティバル 第48回 邦楽演奏会」
3部「壷坂観音霊験記」沢市内の段
http://tsuruzawakanya.com/schedule?month=3&year=2018#schedule955

4月8日(日)13時 紀尾井小ホール 「第16回 はなやぐらの会」
私の主催です。「傾城恋飛脚」新口村の段 人間国宝・文化功労者の竹本駒之助師匠の胸をおかりして今年も勉強いたします
http://tsuruzawakanya.com/schedule?month=4&year=2018#schedule895

4月20日(金)18時半 日本橋亭 「女流義太夫演奏会4月公演 義太夫を楽しむためのレクチャー付き公演」
「菅原伝授手習鑑」寺子屋(後)
http://tsuruzawakanya.com/schedule?month=4&year=2018#schedule951

ぜひお誘いあわせてのご来場を、よろしくお願いいたします。

鶴澤寛也
http://tsuruzawakanya.com/

 



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