2020年2月22日

 朝日新聞の「シンプルにばかげている」の件で、何人もの方からメールをいただいた。みんな、「あれはおかしいよね」と思ってたらしい。
 アメリカからもいつもの角谷くんからメールがきたので、ご紹介。

 

 マシュー・スミスさんをググって(そしたらDoctor Whoってイギリスのテレビシリーズの主役を演じた俳優、マット・スミスが出てきて、好きなテレビシリーズなのでしばらく脱線。ダイヤモンドプリンセス号を加えるとちゃんと出てきました。)彼が出てきている記事、ビデオを全て見たけど、該当する発言はなし。朝日新聞のサイトに行くと朝日さんとの電話取材だったらしい。残念。

 


2020年2月19日

 新型コロナウィルスの集団感染で話題になっているクルーズ船の件で、政府がアメリカのメディアから批判されているらしいが、それはさておき、2月17日の朝日新聞朝刊27面の記事に、ちょっと気になる表現があったので、引用してみよう。

 

 船にとどまると決めた人もいる。妻と乗船している米カリフォルニア州のマシュー・スミスさん(57)だ。日本で予定されている14日間の観察期間が終わるまであと数日。「ここまで船室で我慢してきた努力を無駄にするようなものだ」。仮にチャーター機で帰れば、さらに2週間隔離されることになり、「シンプルにばかげている」とも話した。

 

 気になったのは、いうまでもなく、「シンプルにばかげている」という一文。日本語としてはちょっと変だ。もしかして、simply foolishか、simply ridiculousを訳したのかなと思ったのだが、こういう場合のsimplyは、強調の副詞で、「全く、完全に、非常に」といった意味なので、だったら、「まったく、ばかばかしい」あたりが標準的な訳だろう。
 ところが、そのときふと、このマシューさんはある程度日本語を知っていて、「シンプルにばかげているよね」と日本語でいって、それを記者さんがそのまま、ここに持ってきたのかもしれないと思った。しかし、それならそれで、ちゃんとわかるようにしてほしい。
 いま日本がコロナウィルスの集団感染で大変なときに、そんな些末なことを書くなといわれそうだが、そこが気になってしまうのが翻訳家なのだ。


2020年2月17日

  今夜の酒は、「大典白菊」。岡山のお酒。これを飲みながら、翻訳中。
今日は飲むのだ。飲むことは飲むけど、飲みながら翻訳をするのだ。BGMは中森明菜。
 今日は朝から、入試監督で、9時半集合、4時半解散。そこそこ疲れる。この年になると、毎回チーフだし。チーフなんだけど、年が年だからミスが多い。チーフは、若い大学職員がするのが絶対いいのに、大学は何を考えてるんだと思う。
 二、三年前、やはりチーフで、ふたつ目の試験が終わったとき、「今日の試験はこれで終わりです……」といいかけたら、助手の学生が飛んできて、「先生、もうひとつあります!」と教えてくれた。やっぱり若い人は優秀だと思う。いや、ぼくが頼りないだけなんだろうけど。
 そういえば、まだぼくが大学院の頃、何人かの先生からきいた話がある。
 当時はまだ入試問題で手採点の部分がかなりあって、そこは出題者がすべて採点をしたらしい。ときには5千枚、いや、1万枚近く採点することになったかもしれない。
 あるとき、英語の採点で問題が持ち上がった。ある先生が出題した問題を、その先生がすべて採点して帰ってしまったあとに、なんと、100枚ほど未採点の答案用紙がみつかったのだ。当時はもちろん携帯などない。自宅に電話をしてもだれも出ない。しかしその日のうちに採点をしてしまわないと、発表に間に合わない。しかたなく、そのとき採点場に残っていた英語の教員が集まって、その先生が採点した答案用紙を持ってきて、採点基準を分析・推定して、残りの答案を採点しようということになった。
 ところが、さっぱりわからない。いったい、どういう基準で、どう採点しているんだ?! というので、かなりもめたらしい。
 そのあと、結局どうなったかは覚えていないんだけど(まあ、覚えてないことはないんだけど)、40年くらい前は、そんなこともあったんだろうなと思う。この件ももう時効……というか、関係した先生方はすべて亡くなっているから、天下晴れて時効なのだが、それにしても思うのは、手採点のぶれの大きさだ。
 ある人が採点した500枚の答案をみて、その人の採点基準がきっちりわかる人がいったい何人いるんだろう。
 つまり、何がいいたいかというと、手採点は出題者本人が採点してもぶれがかなりある、それをほかの人を使って、さらにバイトまで使って、きっちり採点できるはずがないではないか、ということだ。
 ぼくは作文能力は大切だと思うし、文章を読んで分析して、それについての意見をきちんとまとめる才能も評価すべきだと思う。
しかしそういう能力や才能は測定不可能なのだ。測定不可能だからこそ、重要なのだ。
 


2020年2月16日

 消せるボールペンはとても便利で、もうずいぶん前からお世話になっている。フリクションというやつの5个寮屬使いやすくて、替え芯も常備している。原稿のチェックも、ゲラの書きこみも、手帳の予定の記入もすべてこれを使っている。いや、使っていた……のだが、一週間程前から、いきなり青になってしまった。というのは、赤のフリクションが一斉にいなくなってしまったのだ。
 たしか、オルダス・ハクスリーがエッセイでこんなことを書いていた。物にはすべて悪意があって(あるいは悪魔が住んでいて)、ここでなくなると本当に困るというときに限って、なくなってしまう。だからそれに対抗するには、少々なくなってもかまわないように、多数常備するに限る、そうすれば、物のほうがあきらめて、悪さをしなくなるというのだ。ハクスリーは眼鏡をいくつも持っていると書いていた……ような気がするけど、確かではない。昔の大学入試の問題集か何かで読んだのだと思う。そういえば、昔の大学入試の英語の問題には、しょっちゅう、ハクスリーとモームが出てきたなあ。国語の小林秀雄みたいな感じで。
 それはともかく、物には悪意があるというのは、ほとんどの人が実感していると思う。それを人一倍実感しているのが、ぼくだ。だから、部屋にはティッシュの箱が3個から4個置いてある。小銭入れは3個くらいある。しかし何よりたくさん買いこんで、いたるところに置いてある・入れてあるのがフリクションの赤5个澄おそらく10本以上はあって、いくつものバッグに入れ、ペン立てにも入れ、机の上にも置き、コートやジャンパーのポケットにも入れてある……のだが、それが一斉蜂起して、一斉にいなくなってしまったのだ。いったい、どこに隠れているんだろう。
 というわけで、しかたなく、いまは青のフリクションを使っている次第。これ以上、赤は買いたくない……というくらい買っておいたはずなのに、ない!

 

 そういえば、初の小説が出版されます。『ストーリーで読む伝記 ぅ献腑麕次郎』(岩崎書店)。ジョン万次郎の伝記。 2月28日出版の予定。
 乞うご期待。


2020年2月13日

 「小説すばる」で連載していた、「僕が次に訳したい本」という連載エッセイの80回目に取り上げたのが、〈IMA〉という写真の季刊雑誌の創刊準備号だった。たぶん、2012年だと思う。
 このエッセイの一部を引用してみよう。

 

 そして最後のほうには渡部雄吉の『A Criminal Investigation』という写真集の紹介。これは一九五八年に茨城県で起きたバラバラ殺人事件のふたりの捜査官を追ったもの。当時は雑誌に掲載されただけだったが、「あるイギリス人が神保町の古本屋で渡部のオリジナルプリントを偶然発見したことをきっかけに」、海外で展示されるようになり、フランスで写真集として出版されることになったという。捜査本部での会議の様子、捜査官の歩く町の様子、黒電話でしゃべっている横顔、霧のかかった橋の上のふたりのシルエットなど、どれもが映画のスチール写真じゃないかと思ってしまうほどの臨場感があって、奥行きがあって、迫力がある。この写真集は早速注文した。

 

 このエッセイを書いた段階では手元になかったのだが、しばらくしてフランスから届いた。判型はほぼA4で布装。表紙にはタイトルを印刷した紙と、刑事の小さめの写真が貼ってある。とても凝った装丁で、印刷されている紙がふつうの写真集の紙ではなく、かすかに黄色味を帯びた紙で、それも袋折り。2012年の発行だった(初版は2011年らしい)。
 じつは昨日、捜し物をしていてこの本が見つかり、何度もくり返しながめて、いいなあと思い、もう一冊買っておこうと思って調べてみたら、2013年に日本でもこの写真集が出版されていたので、こちらを買ってみた。出版社はroshin books。『張り込み日記 渡部雄吉』。霧のけぶる橋の上でふたりの刑事が向かい合っている写真が表紙だ。こちらはよくある写真集の紙を使っている。おもしろいことに、フランス版とこの日本版、くらべてみると、収録されている写真が違うのだ。日本版の後書きには、こう書かれている。

 

 幸いにもオリジナルのネガフィルムは日本で保管されていて、今作品は新たに制作されたプリントで再構成した。

 

 じゃあ、もっとほかの写真もみたいなと思って調べてみたら、なんと、2014年に、こんな本が出ていることがわかった。
 『張り込み日記』渡部 雄吉 (写真) 乙一(構成と文) 祖父江慎、その他(AD)
 出版社は2008年にできたナナロク社。同社の紹介文をちょっと引用。

 

60年前に、写真家・渡部雄吉が撮影したのは、
実際の殺人事件を捜査する刑事2人組の捜査記録でした。
20日間にわたり撮影された、のべ1000枚以上の写真を、
ミステリー作家として人気を集める乙一が構成に参加、
一冊の写真集となりました。
写真の合間には、乙一による事件概要を記載。
徐々に解明される事件の全貌を追いながら、
渡部雄吉の写真の真に迫る美しさが堪能できる一冊です。

 

 ナナロク社といい、roshin booksといい、おもしろい企画を立てて、いい本を出してくれているんだなと感動してしまった。
 それにしても、神保町でオリジナルプリントを発見したイギリス人がすごい!
 「千里の馬は常に有れども伯楽は常には有らず」
 ぼくもヤフオクで頑張ろうと思う。


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